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VICアカデミー「不動産市場の動向と相続実務の核心」

2026年 07月 17日

VICアカデミーとは、弊社理念にある「学習と成長」の実践の1つとして開催しているVIC社員及び関係者のための
勉強会です。

「不動産市場の動向と相続実務の核心」
講演者:株式会社エムレバレッジ 代表取締役 稲留誠 氏
実施日:2026年6月29日(月)

【講演者プロフィール】
1966年11月29日生まれ
1984年 札幌市立旭丘高校 卒業
1988年 小樽商科大学 卒業
1988年 株式会社リクールート入社
2006年 株式会社エムレバレッジ設立


■プロフィール
 稲留誠(株式会社エムレバレッジ 代表取締役)。北海道札幌市出身、旭丘高校卒業。小樽商科大学卒業後、株式会社リクルートに新卒入社。38歳で退職し、不動産会社を設立した。現在は不動産仲介業務に加えて、相続に関する相談・実務を主要な専門分野としている。

■地盤リスクと立地選びの基礎
 地震による被害の大きさは、地盤の性質に大きく左右される。もともと海や川、湿地であった場所を埋め立てた低地・軟弱地盤は、液状化や大きな揺れの被害を受けやすい。一方、白金や大森などの古くからの台地は地盤が強固とされる。大森は貝塚が発見されていることからも、古くから陸地であったことがうかがえる。同じ市内であっても、台地部分と旧河川・旧湿地帯が混在しているケースがあり、一律に安全・危険と判断できない難しさもある。既に購入して住んでいる場合は対策を講じるほかないが、これから購入を検討する場合は、国土交通省などが公開するハザードマップなどを確認し、購入前に土地の成り立ちを把握しておくことが望ましい。

■中古マンション市場の動向とマンション選びのポイント
 ここ2ヶ月ほどで中古マンションの在庫が増加し、価格は下落基調に転じている。背景には、日銀の金利引き上げ観測が強まり、実際に金利がじわじわと上昇し始めたことがあると考えられる。固定金利は現状かなり高い水準にあるため、当面は変動金利を選ぶ方が有利な情勢が続くとみられる。人気の高いエリアは下落幅が緩やかにとどまる一方、駅から遠いエリアや郊外では下落幅が大きくなりやすい。かつては「築25年を境に価格がどんどん下落する」というのが業界の常識であったが、近年はその常識が通用しにくくなっており、管理状態の良し悪しによって築40年を超えても資産価値を維持する物件もあれば、逆に管理が行き届かず短期間で老朽化が進む物件もある。
 物件選びにおいては、管理状態が資産価値を大きく左右する要素であり、「マンションは管理を買え」と言われるほど重要である。特に機械式駐車場を備えたマンションは維持費が高額になりやすいうえ、分譲時にデベロッパーが駐車場使用料を意図的に低く設定していたケースも多く、そうした物件は管理組合の収支バランスが悪化しやすいため注意を要する。また、エレベーターの基数と総戸数のバランスも管理費の水準に直結し、基数が多いタワーマンションなどでは管理費が高くなりやすい一方、極端に基数が少ない物件は利便性を欠く。実例として、都内の老舗高級マンションにはエレベーターを中央に集中配置しコンシェルジュを常駐させるなど、独自の付加価値で資産価値を維持している例もある。このほか、周辺の居住者層や治安、町内会との関わり方なども実際の住み心地に影響するため、内見だけでなく周辺環境の情報収集も欠かせない。

■新築・中古戸建て価格の高騰と再開発エリア
 注文住宅の建築費は高騰しており、10年ほど前であれば約3,000万円で建てられた住宅が、現在は5,000万円近くに達するケースも珍しくない。建築費の上昇に伴い土地取得のハードルも上がっており、新築で住宅を購入できる層は狭まっている。この流れに引きずられる形で、中古戸建ての価格も上昇を続けている。エリア別に見ると、再開発が進む地域では街並みの整備が完了してから半年ほど遅れて価格が上昇する傾向があり、武蔵小杉や大井町がその代表例として挙げられる。一方、北区赤羽のように再開発がまだ完了していないエリアには、今後さらに値上がりする余地が残されているとみられる。

■相続発生後の基本的な流れ
 相続が発生すると、まず相続人自身が相続するか放棄するかを判断しなければならないが、この判断は非常に短期間で行う必要があるため注意を要する。相続することを決めたら、次に行うべきは相続人の確定と相続財産の調査である。相続人の確定では、血縁関係が複雑なケースや、代襲相続(相続人が先に亡くなっている場合にその子や配偶者が相続人となるケース)が絡むケースもあり、想定より手間がかかることがある。財産調査については、亡くなった方がすべての財産を一覧にして残しているケースは稀であり、預貯金や証券口座など保有先ごとに調べる必要があるため時間がかかる。この調査を疎かにすると、後から高額な不動産や有価証券が新たに見つかった場合、遺産分割協議をやり直さなければならなくなる。税務署は資金の流れを綿密に調査しており申告漏れは発覚しやすいため、財産は漏れなく申告することが望ましい。

■遺産分割の方法と相続登記の義務化
 相続人と財産の全容が固まったら、相続人全員で遺産分割協議を行い、合意内容を遺産分割協議書としてまとめたうえで相続登記を申請する。主な分割方法としては、不動産などを売却して現金化し代金を分配する「換価分割」、財産の種類ごとにそのまま分ける「現物分割」、特定の相続人が財産を取得する代わりに他の相続人へ代償金を支払う「代償分割」、複数の相続人で持分を共有する「共有分割」の4種類がある。このうち共有分割は、将来売却する際に共有者全員の同意が必要になるなどトラブルの原因になりやすく、空き家問題の背景にはこの共有分割によって権利関係が複雑化し、売却の合意形成が進まないケースが少なくないとされる。なお、被相続人が遺言を残していた場合は原則として遺言の内容が優先されるが、相続人全員の同意があれば遺言と異なる分割を行うことも可能である。
 また2024年4月より相続登記が義務化され、相続の開始を知った日から3年以内に登記を行わなかった場合は、10万円以下の過料が科される。所有者不明の空き家や土地の増加が、この制度創設の背景にある。

■不動産売却と相続税の考え方
 相続した不動産を売却する際には、譲渡益に対して最大3,000万円の特別控除を受けられる制度などがあるが、適用を受けるためには売却するまでの間、その不動産を一切賃貸に出さないことが条件となる。これらの控除は、「建物が前提」になるものなので、戸建ての場合、建物を解体すると固定資産税の軽減措置をはじめとする各種の税制優遇がすべて失われる点にも注意が必要である。土地は更地の方が売却しやすいため解体を勧められることも多いが、売却予定がある場合は安易に解体せず、事前に確認したうえで判断することが望ましい。
 相続税額は、実際の売却価格ではなく「相続税評価額」に基づいて計算される。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人数」で算出され、この金額を上回る部分に税率がかかる。マンションの場合、評価額は路線価をもとにした土地部分の評価額と、固定資産税評価額に基づく建物部分の評価額を合算して算出する。一般的にマンションの相続税評価額は実際の市場価格より低くなる傾向があり、この差を利用した相続税対策(高層階の物件を購入し評価額と時価の差を活用する方法など)も広く行われているが、短期間での売買など不自然な取引は税務署に把握されやすく注意が必要である。

■まとめ
 最後に、不動産の相続で対応が難しいとされるのが残置物の撤去である。売却・解体のいずれの場合も家財等の残置物はすべて撤去する必要があり、特に遺骨や液体類(醤油・酒など)の処分には注意を要する。荷物の量によっては撤去費用が高額になるため、リサイクル業者等を活用しつつ早めに見積もりを取ることが望ましい。全体を通じて、不動産市場は在庫増・金利上昇により変化の兆しが見え始めており、相続実務では財産調査・遺産分割・登記・納税のそれぞれに期限があるため、早い段階で専門家に相談し計画的に進めることが重要である。