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VICアカデミー「企業活動と税理士の仕事」
2024年 10月 11日
VICアカデミーとは、弊社理念にある「学習と成長」の実践の1つとして開催しているVIC社員及び関係者のための
勉強会です。
「企業活動と税理士の仕事」
講演者:税理士法人アイ・タックス 代表社員 山田誠一朗氏
実施日:2024年9月27日(金)
税理士 山田誠一朗(やまだせいいちろう)
【略歴】
1972年 横浜生まれ
1996年 早稲田大学政治経済学部卒業
一般上場企業の経理・財務を経験し、2002年より会計事務所で勤務。
2007年からは不動産SPCに特化した会計事務所に勤務しマネジャーを担当。
2014年 独立開業
2017年 税理士法人アイ・タックスの代表社員に就任。
法人の会計・税務を中心に中小企業の資金調達にかかるサポートを得意としている。
〈主な著書〉
『事例で学ぶ 暗号資産・NFT・メタバースの会計税務Q&A70選〔共著〕(清文社、2024年)
「所得税・個人住民税の定額減税/給与所得者の所得税の確定申告」『税務弘報2024年6月号』(中央経済社)
「夢実現のためのママの働き方ガイド」『赤ちゃんができたら考えるお金の本 2024年度』(ベネッセコーポレーション)
■はじめに 税理士の仕事とは
税理士とは税金のプロというだけでなく、中小企業の経営者にとっては、経営の相談相手でもある。 中には、領収書や請求書を預かって数字だけまとめるという税理士も沢山いるが、私が所属する税理士団体・TKC全国会(日本に約8万人いる全税理士の内の1万人強(全税理士の約14%)が会員になっている日本最大級の税理士団体 )では、税務・会計・保証・経営助言を、税理士の4大業務として掲げている。特に4つ目の、“経営助言”、つまり、経営者と伴走して経営を支えるという点は、今後、生き残っていく税理士の必須事項だと考えている。
実際に、中小企業の経営者に、日常的に経営の相談は誰にするかを問うたアンケートでも、60パーセント超の経営者が、経営の相談相手は税理士・公認会計士と答えている。
■プロフィール 山田氏と税理士法人アイ・タックスについて
大学卒業後、一般企業に就職し、財務・経理を担当。その後、税理士業界に進み、40歳頃に独立して恵比寿で開業し、3年後、税理士法人アイタックスの代表に就任。
税理士法人アイ・タックスは、税理士法が改正されて税理士法人が作れるようになったばかりの頃、TKC全国会に所属している東京と福井の税理士数名で立ち上げた税理士法人。
税理士法人を立ち上げるには、最低でも2名以上の税理士が必要なため、税理士事務所の形態で1番多いのは、所長が一人いて、2?3人スタッフがいる形の個人事務所だが、アイ・タックスでは、税理士が福井と東京にそれぞれ2名ずつおり、毎月客先に行って税務・会計のチェックをする監査担当者が12名(東京は5名)、総務は4名(東京は2名)という規模の税理士法人。メインは法人税に関する企業の顧問業務だが、特に業種や税の種類で特化せず、個人顧問や相続税申告など、幅広い業務を行っている。
その他のアイ・タックスの特徴としては、
1.地場(渋谷)の金融機関とのコネクションがあり、顧問先で必要があれば、融資を紹介。
2.従業員を大切にした“健康経営”に注力し、健康経営優良法人の認定を取得。
3.働き方改革に取り組んでいる。残業を29時間以下に抑えている。また、アイ・タックスでは確定申告を2月中に終わらせて3月初めに長期休みを取ることにしている。
■税理士業界の状況
日本全国に約360万社ある中小企業の内、約9割に税理士が関与している。大企業には、企業内税理士がいる。
税理士の業態としては3パターンあり、自ら税理士事務所を立ち上げる独立開業型・大企業の企業内税理士・大規模税理士法人に雇用される勤務税理士がある。日本税理士会が10年ごとに行っている、税理士の実態調査では、税理士資格者で最も多いのは60代の30%で、50代が17%、70代が13%で、税理士の平均年齢は60歳代と言われていたが、これは2015年のアンケートなので、現在はもう少し若い世代が増えているのではないかと予想している。 この調査結果の頃は、税務署を引退した人が税理士事務所を開業することが多かったが、最近はインボイス制度などで税制が目まぐるしく変わっており、税務署OBや年配の税理士は、変化についていけなくなっており、若い税理士が増えている。税理士資格の取得経路としては、公認会計士が6.2%、弁護士が0.1%、税務署OBが30%(上記3つは税理士試験に合格しなくとも税理士資格が得られる)、税理士試験合格者が73.7%。税理士の男女割合は、男性が85%、女性が15%。税理士事務所の1事務所あたりの顧問先数が約37社、1事務所あたりの従業員数は約5人。これが、一般的な税理事務所の規模感。
■法律からみた税理士
1.税金の種類 (国税)所得税・法人税・相続税・贈与税・印紙税・消費税・酒税・関税など
(地方税)住民税・事業税・不動産取得税・固定資産税・地方消費税・自動車税など
税理士試験では、5つの税金を選択して受験するため、税理士といっても、全ての税金について知っている訳ではない。
2.税理士法
税理士は国家資格であり、税理士法という法律に基づいて活動しており、その中に制限や義務が定められている。
しかし、税理士試験の受験科目に税理士法がないため、内容をあまり知らない税理士も多い。
第1条には、税理士の使命が書かれており、独立した公正の立場として、中立的な視点から、税務に関する専門家として、納税者の信頼に応えることなど定められている。第2条には、税理士の業務について書かれており、税務代理、税務書類の作成・税務相談という3つが書かれている。この3つの業務については、税理士資格がないと行ってはいけない。
■税理士の懲戒処分
コロナ禍後、企業への税務調査が増えているが、それとは別に、税理士に対して、税理士法に基づいているかどうかの調査も行われており、違反をしていると、懲戒処分となる。実際にあった違反としては、外注費の架空計上、源泉所得税の不当圧縮、株主総会不開催の決算期変更など、税金を故意に納税しないような操作があった場合、懲戒処分となる。
懲戒処分には、税理士業務の禁止(3年間の資格はく奪)、2年以内の業務停止、戒告、の3種類がある。
税理士法に定められた税理士の義務の中でも、特に厳しいのが、使用人監督義務。税理士資格を持っていない従業員を、税理士が適切に監督する必要があるというもの。また、支店を設置する場合、そこにも税理士を1人設置しなくてはならないという決まりもあるが、コロナ禍でテレワークが推奨され、自宅で作業をする必要性が高まったこともあり、事務所の支店としての看板表示をしなければ、別拠点で業務をしてもいいようになった。しかし、無資格の従業員が自宅で作業をするような場合にも、先述の使用人監督義務によって、ネットワークなどで状況を監督しなければならない。また、名義貸しも税理士法違反にあたる。これは、申告書を無資格者が作成し、税理士はサインだけをするというもの。
■企業活動で気を付けるべき税務
最後に、実務上の例をいくつか紹介する。
1.商品の納品は終わっているが、金額が確定していないので請求書を発行していないような場合でも、売上は見積金額で収益に計上する必要がある。逆に、売上原価についても概算計上は認められるものの、費用については、債務確定主義があるため、金額確定前に計上することはできない。
2.業務中の駐車違反の罰金は、経費として損金算入はできない。ただし、同じ罰金でも、社会保険料や労働保険料の追徴金や延滞金は、損金への算入が認められる。
3.他社が行う接待場所へ向かうための交通費は、交際費ではなく、旅費交通費として計上する。逆に、自社が懇親会を主催する場合に、お客様を会場まで案内するために支出した交通費については、交際費に該当する。
4.弁護士など、業務委託者に対して支払う旅費・交通費は、税務上は報酬と判断されるため、源泉徴収の対象となる。但し、業務委託者が使用するホテルや交通機関に対して、自社が直接料金を支払った場合は、報酬とみなさず、源泉徴収をする必要はない。
■まとめ
厳しい経済環境、税制をはじめとした大きな制度改正、急速に進むデジタル化、これらに立ち向かうためには、単純に税務の代理人というだけではなく、経営者の良い相談相手として税理士を活用していくことが必要不可欠。
ぜひ、信頼できる税理士に出会って、企業活動に役立ててほしい。